十字架の物語 ―pain(t)ed Story―

 

 一人一つの物語がある。

 その物語は時に悲しみに、時に喜びに、あるいは憎しみに……それぞれの色を添えながら進んでいく。

 その物語こそが、その人の人生そのもの。

 人生を振り返って、やり直したいことが多くあるのは当たり前。

 人生を繰り返して、もう一度やり遂げたい願いの存在も然り。

 でも、その一瞬が輝いているから、人は前に進める。

 もしも、その一瞬がなかったなら……人はどうなるんだろう。

 

 私には未来がない。

 そして振り返る過去も、私自身のものではない。

 だから、私は何もない。

 

 そんな私に、未来を与えようとした存在があったとすれば。

 それはきっと、とても愚かしくて……優しい存在。

 未来は今の積み重ね。

 夢は過去の思い出の創造物。

 だから人は夢を見る。

 そして、私も夢を見られる日が来るのかもしれない。

 今と言う時間を積み重ねて。

 私だけの思い出と言う、過去を書き留めて。

 残念だけど、私が貴方に話せる過去は持っていないから。

 だから、別の物語を貴方に話そう。

 

――そう。傷付きながらも、輝く過去を持った、彼らの物語を。

 

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