第二話 堕ちた月の欠片

 

 触れれば表面は容易に崩れ落ちる。

 ざらざらと風化した煉瓦の感触が指先から伝わった。

 長い間放置された、栄光の名残。

 白亜の城は、今にも崩れ落ちそうな柱で脆く支えられている。

 隙間から差し込む日の光が、足元を柔らかく照らしていた。

 階上へ続く階段は崩れ落ち、行く手を阻んでいた。

 この先に、玉座の間があるはずだと、クオルは言っていたがこれでは進めない。

 行く手を塞ぐ瓦礫の前でじっと立ち尽くす白の背中は、何を想っているのだろうか。

 この場所に対する想いがどんなものかは、ブレンには想像も出来なかった。

「……不思議です」

 不意に、クオルが口を開いた。

 無意味に視線を巡らせていたブレンは、クオルの小さな背中に、視線を戻す。

「何か感じることがあるかなって、思ってましたけど。……何にも、ないんです」

「何も……ですか?」

「怖いとか、懐かしいとか。……楽しかったな、とか。何でもいいから、感じるかなって」

 怖い、という言葉にブレンは思わず眉をひそめる。

 それが最初に出て来る理由は、思い当たらない。まだ知らない何かをクオルが抱えているなら聞くべき、なのだろうが。

 躊躇していると、クオルは振り返って微笑んだ。

 淡く、触れたら壊れそうな微笑だ。

「でも、何にも感じないんです。……僕は、思い出と一緒に、感情まで捨ててしまったんですね」

 閉じ込められていた三十年近い年月が、精神まで麻痺させたに違いない。

 寂しそうに笑って、クオルはくるりと向き直った。

 白い法衣と金髪がふわりと広がり、音もなく重力に従う。

「……僕には、もう帰れる場所は、ないんでしょうね」

 悲しく笑ったその言葉に、胸が抉られる。

 黙り込んだブレンに苦笑して、クオルは肩に居たライヴに何事かを告げた。

 ぱたりと翼を広げ、ライヴは小さな体を宙に舞い上がらせると、ついっと階上へと羽ばたいていく。

 クオルが頼んだのだろう。

 見送る横顔は、何を想っているのだろう。

 人も物も、思い出さえ崩れて消えたこの場所はそれでもクオルの故郷だ。何も感じないわけがない。

 いや……そう、あって欲しくない。

「え?」

 呆けたクオルの声が、ブレンの耳元を掠める。

 思わず、ブレンはクオルを抱き締めていた。言葉の裏に隠された、心の中で、軋んでいる想いを抱き留める様に。

「ブレン? どうしたんです、か?」

 戸惑いを載せたクオルの声を聴きながら、ブレンは心の内で自分を罵倒する。

 紡ごうとしている言葉は、最悪で。

 イシスの忠告を完全にふいにする、やってはいけないことで。

 だが、それ以外は浮かばない。それ以外は、自分には出来ない。

「……私が、探しますから」

「え?」

「クオル様の、帰る場所を……絶対、見つけますから」

 何年かけても。この一生を捧げてもいい。

 困った様子で口を閉ざすクオルには、申し訳なく思いながら。それでも、ブレンは誓う。

「……それが、私のいる意味です」

 

◇◇◇

 

 かつては多くの人が通り過ぎたであろう煉瓦の敷き詰められた通りは、隙間から緑を覗かせていた。

 風に、白い花が揺れている。

 その花にクオルの指が触れると、ぱらりと花弁が風に舞い上がった。

 立ち上がって、花弁を視線で追いかけるクオルに、ブレンは問いかける。

「……歩いた道、ですか?」

「いいえ。あ……言ってませんでしたっけ。僕は、ここでも城から出たこと、ないんです。いつも城の自室から、どんな空気なのかなって眺めてました」

 思わず絶句するブレンに、クオルは苦笑する。

「気にしないでください。知らなければ、憧れないものです。今は、色んなものが見れて嬉しいんですよ」

「すみません……」

「いいんです。ブレンは、そういう面で僕を支えてくれるって約束しましたから」

 そう微笑んだクオル。ブレンは二の句が継げなかった。

 クオルと比べれば、ブレンは魔法も剣術も遥かに劣る。守られるどころか、守られてばかりだ。

 それでも、自分に出来るとしたらクオルが見られなかった世界を、見せることだけだった。

 だから、ささやかなりとも約束した。

――共にいる間に、多くの事を見せると。

 そんな約束を、まだ覚えてくれていたらしい。

 嬉しくもあり、苦しくもなる。

 永遠には続けられない、淡い約束を信じてくれることが。

「あれ?」

 不意に、クオルは体を左に傾けた。ブレンの背後を窺うように。

 小首を傾げ、ブレンも振り返る。

 真っ黒な塊が、半壊した家屋の扉の奥で動いているようだった。

 目を細め、自身の大剣の柄に手をかけたブレンの脇を、ふわりと白が過る。

 ぱたぱたと走り寄るクオルに、ブレンは一瞬呆気にとられた。

 唖然としている間に見る間に距離を詰めるクオルを、ブレンは慌てて追いかける。

「クオル様! 危ないですからっ!」

 そもそも、クオルの肩にいるライヴが止めてくれてもいいはずで。

 残念ながらライヴは口を挟む気はないらしい。

 あと一歩で踏み込む、という所でブレンはクオルの手を掴む。

 吃驚した様子で振り返ったクオルに、思わずブレンは大きくため息を吐いた。

「何がいるか分からないんですよ」

「でも、怪我してるみたい……ですから」

「怪我?」

 こくりと頷いて、クオルは視線を地面へ向ける。

 導かれるように視線を落とすと、赤黒い点がぽつぽつと連なり、家屋へ続いていた。

 確かに、血のように見える。

 目を細めて、ブレンは視線を上げた。

 薄暗い家屋の奥、壊れた窓から注ぐ光に動く、シルエット。

 小刻みに震える真っ黒な巨大な……犬。

 しかし元来そんな大きさの犬は存在しない。これは……。

「……魔物?」

「ガルムです。大丈夫ですよ」

 優しく呟いて、クオルはブレンの手をそっと解くと迷わずに蹲るガルムへと歩み寄る。

 咄嗟に制止の声を上げようとしたブレンの眼前で、クオルの肩から離れたライヴが羽を広げた。

 思わぬ行動にブレンが言葉に窮していると、ライヴが告げる。

「信じてあげてください」

 信じると言っても。

 戸惑うブレンの視界に、ガルムの傍らで膝をつくクオルの後ろ姿が見えた。

 金色に輝く鋭い視線を向け、牙を剥きだしにするガルムへクオルは微笑んで見せた。

 そして、淡い緑の光がガルムを包む。

 数秒もなかった。

 短い時間で光は消え失せ、その場には沈黙だけが残される。

「もう痛くないですよ」

 クオルの手がガルムの頭に伸びる。

 止めるべきだったのかもしれないが、ブレンは動けなかった。

 ただ、ガルムの鼻筋を撫でながら嬉しそうに笑っているクオルを見つめてしまっていた。

 くすぐったそうに顔を背けたガルム。

 ぱたぱたと豊かな毛におおわれた尻尾を揺らす様は、完全に犬そのものだった。

 呆気にとられるブレンの前に居たライヴはふわりと、ブレンの肩に乗り翼を畳む。

「でも、声は出せないかもしれないですね……ごめんなさい。あまり、上手くないので」

「声、ですか?」

 やっと言葉を紡いだブレンに、クオルが振り返る。

「手足もですけど……喉のあたりも、切られてたんです」

 そういえば、空気の漏れるような音しか、聞こえない。

 呼吸はともかく、声帯に傷を負ってしまった、ということだろう。魔物を倒そうとすれば、首を狙うのは常套手段だ。

 当然と言えばそうで。

 魔物は人の生活に害をなす。だからこそ、狩られるのが通常だ。

 クオルとてそれは分かっているはずだ。

 思わず沈黙していたブレンに、クオルは小さく笑う。

「……魔物だって、住処があって、生きてるんですよ」

 正論ではあるのだろう。

 全ての魔物が、むやみやたらに牙を剥くわけではない。

 多分、そうでなければ目の前のクオルを食い殺さない魔物の、説明が出来ない。

「もう怪我をしたら駄目ですよ。……用もなく人の住む場所に入るのも、危ないですからね」

 幼い子供に言い聞かせるような自然さで、ガルムに対して警告をするクオルに、ブレンは言葉もない。

 常識外れと言えば、それまでで。

 だが、魔物だから殺すということは、本来イコールの関係にない。

 傷ついた存在を助けるのは、非難されるべき行動ではない。むしろ褒められるべき行為だ。

 そんな当たり前が出来るのは、知らないがゆえの、優しさ。

 鳥籠しか知らないクオルだから取った行動に過ぎない。

――それを、咎められるわけがない。

 立ち尽くすブレンの足元を、不意に何かが霞めた。

 とたとたと走る小さなシルエットは、ガルムへと駆け寄る。

 すり寄る小さなその姿は、どうやら、親子らしい。

「良かったですね。お母さんが無事で」

「そのガルムの、子供……ですか?」

「みたいですよ?」

 疑問形で返すクオル。流石に魔物の言葉は分からないらしい。

 すっと立ち上がって、離れようとしたクオルの裾を、親ガルムが咥えて引き止めた。

 目を丸くして振り返ったクオルに、ブレンは思わず笑みを零した。

「懐かれたみたいですね」

「え、ど……どうしましょう」

「クオル様が決めていいですよ」

 ええっ、と戸惑いの声を上げて、クオルは視線をブレンとガルムへ交互に向ける。

 真剣に悩む姿は、何だか可愛らしくもあった。

 やがて、眉尻を下げて酷く自信なさげにクオルはブレンへ尋ねた。

「……一晩だけ、この辺りに居ても、いいですか?」

「クオル様がそうしたいのであれば」

 ブレンの返答に、ほっとした様子でクオルは表情を緩める。

 そして親ガルムの鼻筋を撫でて、嬉しそうに告げた。

「一日だけ、一緒ですね」

 故郷の思い出に、加えられるならそれも悪くないだろう。

 何より、クオルが嬉しいならばそれが一番なのだから。

 ブレンは何となく楽観的な思いで、この一時停止を受け入れることにした。

 

◇◇◇

 

 鳥の鳴き声と、風の奏でる木々の音以外はほとんど聞こえない、沈黙した都市。

 かつてそこに人が住んでいたことさえ、忘れているような場所だ。

 穏やかと言えば聞こえはいいが、寂しい場所でしかない。

 ガルムの親子と戯れるクオルが、ここに居たいと言い出さないことだけを、ブレンは願い始めていた。

 悪くはないだろう。

 かつての故郷では、あるのだから。だが、ここはあまりに寂しく、どこか息苦しい。

 懐かしむ思い出さえないというクオルが残るには、不適切だ。

――勝手な判断だとは理解しつつも、ブレンはそう結論を出していた。

 ガルムの親子に連れられるがままに、ぐるりと都市を一周して戻ってきた頃には、すっかり空は茜色に染まっていた。

 まもなく、夜が来る。

 本来ならば、魔物に警戒しだす時間帯だが。

 正面を見れば、子ガルムを腕に抱きながら、嬉しそうな親ガルムにすり寄られるクオルを見ては、苦笑しか出来ない。

(これが、当たり前な世界ならいいのに)

 魔物と人とがお互いに寄り添って暮らせる世界があれば、どれだけ幸せだろうか。

 人と人さえ、殺し合う世界では難しいのかもしれない。

 それでも、無理ではないはずなのに、だ。

「ブレン、どうかしました?」

 不意に掛けられた声に顔を上げると、クオルが心配そうな表情を浮かべていた。

 ブレンは慌てて笑みを作り、首を振った。

「いえ。そろそろ暗くなってきましたから……星、見えると思いますよ」

「あっ! そうでしたね!」

 ぱっと表情を輝かせたクオルにブレンはほっとする。

 空は茜色。筋状の雲が数本たなびいてはいるが、見えない状況ではない。

 楽しみですね、とライヴに語り掛けるクオルは、一体星に何を願うのだろう。

 その願いが、どうか一つでも叶えばいい。

 

◇◇◇

 

 空を切る、白い光が断続的に閃く。

 昨日以上に、良く見える流星の軌跡。

「流れ星が消えるまでに三回お願い出来たら、その願いが叶うんですよね?」

 何度となく、クオルはブレンに確認をとっていた。

 その度、ブレンは苦笑いで頷く。

「絶対無理ですよね。だって消えるの早いですよね?」

 不服そうにそうこぼして、クオルは膝の上で丸くなっているライヴの背をそっと撫でる。

 最もな感想だが、ブレンは笑いを堪えながら返した。

「それくらい出来たら、願いだって叶えられるだろうってことですよ」

「それはそうでしょうけど。……あ」

 すっとまた一つ、空を光が駆ける。

 そよ風が、空を見上げるクオルの髪を靡かせる。夜色に呑まれない、光でも放っているかのような金髪を風に揺らしながら、クオルはふと、ブレンに問いかけた。

「ブレンは、何を願うんですか?」

「私ですか? 私は……」

 正直、何を願えばいいか分からない。

 強いて言うならば、一つだけあるが。

 期待を載せたクオルの瞳に、ブレンは頬を掻きつつ、ぽつりと返す。

「クオル様が、幸せになれる場所に辿り着けますようにって、ことくらいですかね」

 むしろ、今のところそれくらいしか目標もない。

 自分でもどうかとは思うが、こればかりは仕方ない話だ。

 感情が先行して、動いてしまったこの状況では。

 呆気にとられていたクオルに、ブレンは淡く笑みを返す。

「叶いますから、大丈夫ですよ。……そのために私はクオル様と一緒に居ますから」

「僕は、ブレンに何も、返せないのに?」

 酷く寂しげに、クオルが零す。

 いつも、そうだ。触れたら壊れてしまいそうな、脆く見える表情。

 笑みさえ、一瞬で消えてしまいそうな儚さだ。

 それが、ブレンにとっては今でも辛い。その支えには、未だになれないのだから。

「僕には、幸せって、よくわかりません」

 呟いて、クオルは顔を伏せた。長い睫毛が、不安げな瞳を陰らせる。

 ぎゅっと胸が詰まるブレンを知らないクオルは、囁くような声音で想いを零す。

「普通を知らない僕には、幸せの基準がないんです。……僕は今、自分では幸せなんだろうって、思ってます。ライヴとイシスさんと、ブレンがいてくれる。……外の世界を、自由に見ている。これは、幸せじゃないん、ですか?」

 最低基準を決めるのは、クオルだ。

 だが、クオルにはその基準となる経験値さえない。そんな不自由な幸福は、本当に幸せなのだろうか。

 ブレンにも、その答えは紡げない。それでも、おぼろげな形は、あって。

「追手に怯えることなく、クオル様が共に居たい願う人と、定住できるような場所へ導くのが、私の最低限の使命です。だから……もっと、欲張りな願いをしてくれたって、いいんですよ」

「……僕には、そんな願いは……できません。僕はもう、人じゃない、から」

 言葉を詰まらせたクオルの痛みは、ブレンにも響く。

 人という枠から外れた苦しみの中でもクオルは必死に、今に縋り付いているのだろう。

 ブレンがいつか別れ行くという現実から、恐らくは目をそらしている。

 それは喜ぶべきか、悲しむべきか。半々だ。

 こんなに濁った想いを抱えていることを、知らないだけなら。

 純粋な信頼を向けられるような、立派な人間じゃないことをクオルは理解していないのだろう。

 それを理解して貰いたくて。悲しい言葉をこれ以上紡いで欲しくなくて。

 ブレンは腕の中に、クオルを強く抱き締める。

「ごめんなさい。……心配、させてますよね。困らせてますよね」

 呟くクオルの声に、ブレンは首を振る。今一番苦しんでいるのは、誰でもないクオルだ。

 だというのに、そんな事を、言わせたくなかった。

 これ以上気を使わせるのはブレンとしても辛い。酷く胸が軋む。

 告げれば、この曖昧でそれでも約束された関係は壊れるのは分かっていた。

 でも、沈黙を続けることは……これ以上出来ない。

 きっと今が、最後の、分岐点だから。

「好きです」

 ぎゅっと腕に力を込める。少しでもその想いの意味を、伝えたくて。

「貴方が好きなんです」

「僕だって、ブレンが居てくれて嬉しいですよ?」

 ふふっ、と楽しげに笑うクオルは、多分分かっていない。

 微妙な食い違いを解消する術がブレンには咄嗟に思いつかなかった。

 世間知らずも、常識の欠落も、どうしてこうも、過酷なのか。

 あるいは……だからこそ、踏み切れるのかもしれないが。

「……先に謝っておきます。……すみません」

「え?」

 何が、と言いかけたクオルの言葉を唇で塞ぐ。

 冷たくて、どこか苦いキスをする。

――次の瞬間。

「いっ……」

 ばっと剥がす様に顔を離す。口の中に広がり出す、血の味にブレンは眉をひそめた。

 問答無用といっていい強さで、噛み付かれた。

 責められこそすれ、責める権利はないが、思わず真意を確認したくはなる。

「お前は、馬鹿か」

「い……イシス様っ?!」

 思わず声がひっくり返ったブレンに、クオルと交代したらしいイシスは鼻を鳴らして、不機嫌そうに唇を拭った。

 流石にその挙動には傷つかずにはいられない。

 同時に、反省もするのだが。

「すす、すみませっ……っ痛ぅ」

 口を開けば、切れた部分が再び外気に触れて説明しようのない痛みに苛まれる。

 イシスはそんなブレンに冷たい視線を向けていたが、やがてついっと視線を背けた。

「最悪だな。お前は本当に最悪だ」

「……クオル様は……?」

「卒倒した。誰かの馬鹿な行動のせいだな」

 返す言葉もない。広がる苦い味に、ぎゅっと口を噤んでいるブレンへと、イシスはため息を吐く。

「やっと歩き出した相手に、全速力でぶつかるな」

「でも……私には、時間が、ないんです……よ? 今こうしている間にも、私はクオル様と離れてるんです。それを、良く我慢してる方だって、自分を褒めたいくらいなんですよ?」

「分かっている。私は、な。だが、こいつは違うんだ。やっと歩き方を覚えて、走り方を知った相手に、空を飛べは無理だろう」

 反論が出てこない。

 顔を伏せたブレンに、イシスは再び大きくため息を吐いた。

「答えは、焦らせるなよ。でないと……」

「わ、分かってます。クオル様が辛い選択は、させませんからっ……」

「ならいい。……全く、お前の馬鹿さ加減には呆れて物も言えんわ」

 イシスの鋭角な発言に、ブレンは謝罪の言葉を紡ぐ以外は、出来なかった。

 折角今夜こそ流星群が見られると喜んでいたクオルだったのに、と自省しつつ。

 ガルムの親子は、少し離れた場所で体を寄せ合って休息している。

 時折、母ガルムの耳が動いているので、完全に寝ているわけではないのだろう。

 魔物も常に警戒をして生きている。あるいは、人以上に。

 

 

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