プロローグ 記憶の声

 

 私は一人きりだ。

 私は、たった一人で、絶望に沈んでいる。

 希望の種をいくら撒いても育つのは絶望に侵食され、花開くことはなかった。

 だから、私は眠ることにした。

 私の存在が絶望を育てているのならば、私が眠っている間に希望が育つ。

 貴方は私と引き換えに、命を手に入れた。

 私は貴方と引き換えに、命を手放した。

 貴方が私にくれたものを、私が目覚めた時に、私から贈ろう。

 だから、その時まで、おやすみなさい。

 

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